この記事で分かること
- 伝説のギタリストたちが愛器に名前をつけた理由とエピソード
- クラプトン「ブラッキー」からモレロ「アーム・ザ・ホームレス」まで13本の誕生秘話
- 各ギターに対応するシグネチャーモデル・復刻モデルの情報
1本のギターが、歴史を動かすことがある。
クラプトンが「ブラッキー」と名付けた黒いストラト、ビリー・ジョーが父から受け取った「ブルー」、カートが自らデザインした「ジャグスタング」——それぞれのギターには、音楽だけでなく、ギタリスト自身の人生が刻まれている。
この記事では、ロック史に名を残す13本の「伝説の愛器」を、その誕生秘話・改造の歴史・入手できる復刻モデルとともに徹底解説する。
こんな人に読んでほしい
- 好きなギタリストが何を弾いているか、その背景まで知りたい人
- 「ギターに名前をつける」文化に興味がある人
- シグネチャーモデルや復刻モデルの購入を検討している人
クラシックロック世代の伝説ギター
① ブラッキー(Blackie)― エリック・クラプトン
世界で最も有名なストラトキャスターと言っても過言ではない。1970年、クラプトンはナッシュビルの楽器店「Sho-Bud」で6本のビンテージ・ストラトをまとめて購入。そのうち3本をジョージ・ハリスン、ピート・タウンゼント、スティーヴ・ウィンウッドに譲り、残った3本から最良のパーツだけを選んで組み上げたのがブラッキーだ。
1956年製ボディ、1957年製ネックを組み合わせた、文字どおりの"フランケンシュタイン・ストラト"。名前の由来はフィニッシュがブラック(黒)だったからで、そのシンプルさがいかにもクラプトンらしい。1973年のレインボー・コンサートでデビューし、代表作『スローハンド』(1977年)、武道館公演(1979年)など要所要所に登場し続けた。
1985年の「Behind the Sun」ツアーを最後に引退。2004年にはクリスティーズのオークションで約1億円で落札され、当時の史上最高額ギターとなった。
復刻モデル:フェンダーがカスタムショップ限定275本で復刻(2006年)。現行の「Eric Clapton Stratocaster」ブラックカラーのヘッドには「BLACKIE」のシグネチャーが入っている。
クラプトンの使用ギター・エフェクターをもっと詳しく
② No.1レスポール ― ジミー・ペイジ
レッド・ツェッペリン全盛期を支えた1959年製ギブソン・レスポール・サンバースト。「バースト」と呼ばれる59年製は年間わずか643本しか生産されておらず、現在は50万ドル以上の価値を持つ。ペイジはこれをロー・ストラップで腰よりも低い位置に構えて弾く姿で、70年代のギターキッズたちに「レスポールは低い位置で弾くもの」という美学を植え付けた。
「No.1」という愛称はペイジのメインギターであることを示す序列名で、「No.2」も同じく59年製レスポール。ライブでは弓を使った「ボウイング奏法」でも披露された。
ジミー・ペイジの使用ギター・エフェクターをもっと詳しく
③ レッド・スペシャル(Red Special)― ブライアン・メイ
世界でただ一人、自分でギターを作り続けているトップ・ギタリスト。ブライアン・メイは17歳のとき、父ハロルドと共に自宅の暖炉まわりの木材(ビクトリア朝時代のマホガニー)を削り出して本体を製作。ネックはアコースティックギターの部品、ナットは母親のアイロン台の骨格から作られたという徹底ぶりだ。
1963年から現在に至るまで、50年以上同一の個体を使い続けている。ピックの代わりに「イギリス6ペンス硬貨」を使うことでも有名で、エッジの立ったファズ系サウンドはこのコインならではの産物だ。
復刻モデル:Brian May Guitarsが公式レプリカを販売中。ブライアン本人が監修した「BMG Special」は比較的手の届きやすい価格帯で入手可能。
ブライアン・メイの使用ギター・エフェクターをもっと詳しく
④ ルーシー(Lucy)― ジョージ・ハリスン
ジョージ・ハリスンが1968年にエリック・クラプトンから贈られた1957年製ギブソン・レスポール・ゴールドトップ。元々ゴールドカラーだったこのギターはクラプトンが入手する以前にリック・デリンジャーの手でチェリーレッドに再塗装されていた。ジョージはその赤い色から、赤毛で知られるアメリカの喜劇女優ルシール・ボール(Lucille Ball)の愛称にちなんで「ルーシー」と命名した。
「While My Guitar Gently Weeps」のレコーディングでクラプトン自身がこのギターでソロを弾いたことでも伝説的な1本だ。1973年に自宅から盗難に遭い、犯人がハリウッドの楽器店に売却。ジョージはメキシコ人ミュージシャンが購入していたことを突き止め、身代金として1958年製レスポールを渡してルーシーを取り戻した。
復刻モデル:ギブソン・カスタムショップが「Harrison-Clapton 1957 Les Paul Standard "Lucy"」として全世界100本限定で復刻。
ジョージ・ハリスンの使用ギターをもっと詳しく
⑤ ミカウバー(Micawber)― キース・リチャーズ
ローリング・ストーンズのサウンドを半世紀支えた1953年製フェンダー・テレキャスター。愛称の「ミカウバー」はディケンズの小説『デイヴィッド・コパフィールド』の登場人物から。
このギターの最大の特徴は「5弦チューニング」だ。6弦(最低音弦)を外してオープンGチューニングで弾くキースのスタイルは、「Honky Tonk Women」「Brown Sugar」「Start Me Up」など数え切れないリフを生み出した。6弦がないテレキャスターという奇妙な姿がそのまま、キースのアイコンになっている。
キース・リチャーズの使用ギターをもっと詳しく
⑥ フランケンシュタイン(Frankenstrat)― エディ・ヴァン・ヘイレン
現代のエレキギター設計に革命をもたらした、自作改造ギター。ストラトタイプのボディにハムバッカーとフロイドローズ、フラットな指板にジャンボフレット——今では「当たり前」になっているこれらの仕様は、すべてエディのフランケンシュタインから始まったと言っても過言ではない。
赤・黒・白のジグザグ塗装が特徴的で、複数の個体が存在する。EVHブランドからはいくつものリイシューモデルがリリースされている。
エディ・ヴァン・ヘイレンの使用ギター・エフェクターをもっと詳しく
⑦ オールド・ブラック(Old Black)― ニール・ヤング
1969年に入手した1950年代製ギブソン・レスポール・ゴールドトップ。入手後に黒くリフィニッシュされたため「オールド・ブラック」と呼ばれる。長年の酷使と改造を繰り返しながら、現在もニール・ヤングのメインギターとして現役だ。
Bigsby製ビブラートユニット搭載、ピックアップはフロントとリアで異なるメーカーという独特な仕様。「弾くたびに少し音が変わる」と本人が語るほど個性豊かな1本で、「Cinnamon Girl」「Rockin' in the Free World」などの名演を生み出してきた。
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グランジ・オルタナ世代の伝説ギター
⑧ ジャグスタング(Jag-Stang)― カート・コバーン
カートが自らデザインした、世界でただ一人のギタリストによる「夢のフェンダー」。ジャガーとムスタング、2本のお気に入りをポラロイド写真で撮影し、それを切り貼りしたコラージュをフェンダーに持ち込んで誕生した。
「ジャガーの弾き心地は好きじゃないけど音とデザインは好き。ムスタングの音は好きじゃないけど弾き心地は好き。だから合わせた」というのがカートの動機だ。1993年にプロトタイプ2本が完成し、うち1本をカートがステージで使用。しかし調整に苦労し続け、カートの死後にコートニー・ラブがR.E.MのピーターバックにソニックブルーのJag-Stangを贈った。
復刻モデル:2021年にネヴァーマインド発売30周年を記念してフェンダーが復刻。ソニックブルーとフィエスタレッド、左利き用も販売された。
カート・コバーンの使用ギター・エフェクターをもっと詳しく
⑨ ブルー(Blue)― ビリー・ジョー・アームストロング
40年以上にわたり現役で使われ続ける、パンクの哲学を体現したギター。1982年製フェルナンデス製ストラトキャスタータイプで、当時の価格は約180ドル。ビリーが11歳のとき、母オリーが当時のギター教師から購入し、誕生日プレゼントとして贈ったものだ。その年、父アンディは白血病で亡くなっており、ブルーはある意味で人生最大の喪失と同じ時期に手元へやってきた1本でもある。
このギターを、ビリーはアマチュア時代からメジャーまで40年以上使い続けた。リアピックアップをセイモアダンカンSH-4ハムバッカーに交換するDIY改造も自ら行い、木材を削ってピックガードを切り取るという荒技で取り付けた。その斜めに傾いたリアPUが「ブルー」の最大の特徴だ。ボディには無数のステッカーが貼られている。
現在はオリジナルが老朽化し、ツアーには「Blue 2」と呼ばれるレプリカが使われているが、ライブの一部ではオリジナルも登場する。
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⑩ 1964年製ジャズマスター ― ケヴィン・シールズ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)
「ジャズマスターとの出会いがすべてを変えた」——ケヴィン・シールズ本人がそう言い切るほどの運命的な出会いだった。マイブラ結成から5年間、廉価版ギターを使い続けていたケヴィンが1964年製フェンダー・ジャズマスターを友人から借りたとき、すべてが変わった。
通常のストロークとトレモロアームによるピッチの急激な変化を組み合わせる「グライドギター奏法」は、このジャズマスターとの出会いから生まれた。1991年発表の歴史的名盤『ラヴレス』はすべて、このサウンドの産物だ。
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90年代ハードロック・オルタナの伝説ギター
⑪ アーム・ザ・ホームレス(Arm The Homeless)― トム・モレロ
「世界一ひどいギター」——本人がそう言い続けたギターが、結果的に90年代で最も革新的なギターサウンドを生み出した。
1986年、上院議員秘書として働いていた頃に貯めた給与でLAの楽器店「Performance Guitar」にカスタムオーダー。ギターの材やスペックをまったく知らないまま適当に用紙に記入して出来上がったギターに、トムは「奴らは世界一ひどいギターを作りやがった」と感じた。しかし捨てずに改造を繰り返し——ネックは4回、ピックアップは12回交換、トレモロユニットはケーラーとフロイドローズのあらゆるバージョンを試した。
その改造過程でボディ右上のホーン部分に増設したトグルスイッチが、キルスイッチ奏法の誕生につながった。「Bulls on Parade」のDJスクラッチ音のようなフレーズも、このギターとこのスイッチなしには生まれなかった。RATMの全アルバムを含む22枚以上のアルバムで使用。
ボディには本人手描きのカバのイラストとギター名が書かれている。2025年、フェンダーが遂に完全レプリカモデルを発売。売上の一部はホームレス支援団体に寄付される。
トム・モレロの使用ギター・エフェクターをもっと詳しく
⑫ ジェシカ(Jessica)― スラッシュ
スラッシュが所有する最も有名なレスポール「ジェシカ」。1987〜88年頃、ギブソンがスラッシュに送ってきた2本のファクトリーセカンド(規格外品)のうちの1本で、3ピース・メイプルトップを持つレスポール・スタンダードだ。「このギターは酔っているときに名前をつけた」と本人が語っており、『アペタイト・フォー・ディストラクション』(1987年)の時代から40年近く愛用してきた。
ファクトリーセカンドという「ハネ品」を40年使い続け、シグネチャーモデルにまでしてしまった——それがスラッシュのギター哲学だ。現在はギブソンの公式シグネチャーラインとして「Jessica」が製品化されており、誰でも購入できる。
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⑬ Gibson SG(愛称なし)― アンガス・ヤング
愛称はない。ただし「SGしか弾かない」という50年以上変わらない一貫性こそが、このギターを伝説にした。
1970〜71年頃、16歳のアンガスは兄マルコムに「あの楽器店のSGを試してみろ」と言われシドニーの楽器店へ。レスポールもストラトも試したが、SGを手にした瞬間に「これだ」と確信した。「汗と水で木が腐ってネックが完全に曲がってしまうまで弾いた」とアンガスは語っている。
SGが選ばれ続ける理由は「軽さ・取り回しのよさ・音の抜け」の三拍子。ステージを縦横無尽に動き回り、ダックウォークをしながら弾くアンガスのスタイルには、レスポールの重さでは不可能だった。現在もすべてのスタジオ録音でこのSGを使用している。
現行モデル:ギブソンからAngus Young Signature SGが販売中。エピフォン版もある。
アンガス・ヤングとSGギタリストをもっと詳しく
まとめ:伝説のギター13本一覧
伝説のギター13本まとめ
- ① ブラッキー(クラプトン)— 3本のストラトを組み合わせた"モンスター・ストラト"
- ② No.1レスポール(ジミー・ペイジ)— 59年製バースト、低い位置で弾くスタイルの原点
- ③ レッド・スペシャル(ブライアン・メイ)— 父と自作、50年以上同一個体を現役使用
- ④ ルーシー(ジョージ・ハリスン)— 1957年製レスポール、赤毛の女優ルシール・ボールから命名
- ⑤ ミカウバー(キース・リチャーズ)— 6弦なし・5弦オープンGのテレキャスター
- ⑥ フランケンシュタイン(エディ・ヴァン・ヘイレン)— 現代ギター設計の原点となった自作機
- ⑦ オールド・ブラック(ニール・ヤング)— 1968年頃から改造を繰り返す現役レスポール
- ⑧ ジャグスタング(カート・コバーン)— 写真コラージュから生まれた「夢のフェンダー」
- ⑨ ブルー(ビリー・ジョー・アームストロング)— 母からの誕生日プレゼントを40年使い続けるパンクの魂
- ⑩ 1964年製ジャズマスター(ケヴィン・シールズ)— 友人から借りたこの1本がシューゲイザーというジャンルを生んだ
- ⑪ アーム・ザ・ホームレス(トム・モレロ)— "最悪"と罵りながら改造を繰り返した政治的芸術品
- ⑫ ジェシカ(スラッシュ)— 酔っているときに名前をつけたファクトリーセカンドを40年使い続けた男の話
- ⑬ Gibson SG(アンガス・ヤング)— 愛称はない。ただ50年以上SGだけを弾き続けた
13本のギターに共通しているのは、どれも「完璧なギター」から始まっていないという事実だ。改造し、壊れるまで弾き、時には「世界一ひどい」と感じながら使い続けた結果、ギターとギタリストの間に代替不可能な関係が生まれた。
あなたの手元にある1本も、いつかその域に達するかもしれない。
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