ギター特化ブログ、ヤツのギターへようこそ。
この記事でわかること
- ケビン・シールズが使用するJazzmasterの特徴・主要モデルと「グライドギター」奏法の仕組み
- JazzmasterとJaguarの役割の違いとLovelessにおける使い分け
- Mastery bridge不要のチューニング安定化——「ブリッジチルト」の秘密
- シールズのサウンドに近づくための弦・セットアップの選び方
1991年、ケビン・シールズはギターの可能性を根本から塗り替えました。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『Loveless』が世に出たときのことです。多くのリスナーはその音の正体を特定できませんでした。
これはギターなのか、シンセサイザーなのか。
それとも夢の断片なのか。答えはすべてギターだった。しかも、ほぼ標準的なFender Jazzmasterによって生み出されたものだった。
彼のサウンドの核心は機材の希少さではありません。
トレモロアームを握ったまま弦を弾き続ける「グライドギター」という独自奏法。
そしてブリッジを物理的に傾けて実現するチューニング安定。
その組み合わせがあの唯一無二の音像を生みました。
ケビン・シールズのトーンの核心は「グライドギター」奏法です。
トレモロアームを握ったまま弦を弾き続けます。
音程が微細に揺れ続けます。
ギターの音が空気の粒子のように溶け出します。
あの壁のような音塊が生まれます。
そのためFender Jazzmasterの「フローティングトレモロ」構造が欠かせません。
Jaguarはそのサウンドに別の表情を加える相棒です。
出典:GuitarWorld/Rolling Stone/Fender公式インタビュー
使用ギター一覧
| カテゴリー | 代表モデル | 主な役割・特徴 |
|---|---|---|
| Fender Jazzmaster | 1964年製(借用)/1959年製(個人所有)/J. Mascis Signature | グライドギターの中核。フローティングトレモロが生む液体的な音程揺らぎ |
| Fender Jaguar | 複数のカスタムペイントモデル(ハードウェアはストック) | Lovelessでサブとして多用。Jazzmasterより輪郭のシャープなアタック感 |
このサウンドに近づくための消耗品
ギター本体を手に入れる前に、まず弦を合わせることが最短ルートです。
ケビン・シールズは.011〜.046ゲージを使用していることが複数のインタビューで確認されています。
ケビン・シールズの使用弦(確認済み)
①エレキ弦:.011〜.046ゲージ(ブランド未公開)
Guitar World誌のインタビューでの発言です。
シールズ本人が「Jazzmasterには.011〜.046ゲージが合う」と語りました。
この太さがフローティングブリッジに適切なテンションを与えます。
グライドギター奏法でも音程が安定する直接の理由です。
細すぎる弦はブリッジの「引っかかり」が弱くなり、トレモロ使用時に音程が乱れます。
¥1,000〜1,500前後。
▶ .011〜.046ゲージの弦をサウンドハウスで探す
ピックについては、現時点で本人インタビューでの確認情報がありません。確認が取れ次第、記事を更新します。
各ギターの特徴と音の変化
① Fender Jazzmaster|グライドギター奏法の中核
シールズがJazzmasterと出会ったのは1988年です。
友人のBill Careyが1964年製Fender Jazzmasterを所有していました。
それを借り受けた瞬間、彼のギター観は根本から変わります。
Rolling Stone誌のインタビューでこう語っています。
「あのJazzmasterを弾いた瞬間に虜になった。フローティングトレモロとあのスイッチ群が、それまで使ってきたどのギターとも別物だった」
以来、Jazzmasterはシールズのサウンドの核心となりました。
現在も12〜25本のコレクションを保有しています。
主要なモデルは3本が確認されています。
1964年製(Bill Carey借用)。
1959年製(1989年にLAで購入・1964年再塗装済み)。
J. Mascis Signature Jazzmaster。
パープルスパークル仕上げ・サテンネック・補強トレモロアームが特徴です。
LovelessのアルバムカバーにもJazzmasterのボディがぼかして写っています。
このギターがMBVのアイデンティティそのものである証拠です。
(Rolling Stone誌インタビューより)
技術的な核心はフローティングトレモロシステムです。
ボディに固定されない独立したブリッジが弦振動をそのまま受け流します。
シールズはこれをグライドギター奏法の基盤として使い続けています。
また、シールズのサウンドにはエフェクターも深く関わっています。
シューゲイザーとエフェクターの関係も気になりませんか。
シューゲイザーを代表する10アーティストの使用エフェクターもどうぞ。
グライドギター奏法のメカニズム(Guitar World インタビューより)
トレモロアームを手のひらか手首の下に握ります。
その状態で弦をストロークし続けます。
音程が常に微細に揺れ続ける状態が生まれます。
アームは「下方向にしか動かない」設定が基本です。
上下に動くと聴衆がコード進行を聴き取れなくなるといいます。
アームの高さは「ゆるく・高め」に設定し、Bigsby式のような硬いセットアップは避けます。
アームの根元にテープを巻くことで高さと角度を微調整するのもシールズの手法です。
ブリッジチルトの方法(Guitar World インタビューより)
シールズはMastery bridgeなどのサードパーティ製品を使いません。
純正ブリッジをピボット上で後方(ストラップボタン方向)に傾けます。
それだけでチューニングが安定します。
後ろに傾けると弦がブリッジの溝に「引っかかる」状態になります。
トレモロ使用時もブリッジと弦が一体で動きます。
イントネーションのリセットは必要になります。
ただしヘビーなトレモロ使用後でも1時間は安定するそうです。
そこにフローティングトレモロによる持続的な音程の揺らぎが乗ります。
ビンテージシングルコイルが拾う倍音は輪郭をはっきり持ちます。
それがグライドギター奏法で常に動き続けます。
「固体」ではなく「液体」のような音像が生まれます。
Jazzmaster|使用弦
エレキ弦:.011〜.046ゲージ
シールズ本人がGuitarWorldでこう語っています。
「Jazzmasterには.011がフィットする」
このギターを基準にしたセットアップです。
フローティングブリッジへのテンション確保が音程安定の鍵。
▶ .011〜.046ゲージの弦をサウンドハウスで探す
- 音の特徴:ビンテージシングルコイルの温かい中域と、フローティングトレモロによる音程の揺らぎ
- 相性:逆再生リバーブ(Yamaha SPX90)との組み合わせが抜群
- 代表曲:「Only Shallow」「When You Sleep」「Loomer」
- ほか:「Come in Alone」「I Only Said」
※参考:Fender Jazzmaster(現行)はこちら
② Fender Jaguar|Lovelessを彩る「シャープな相棒」
シールズがJazzmasterと並行して使ってきたのがFender Jaguarです。
Lovelessの制作期間中、複数のカスタムペイントを施したJaguarが使われました。
ハードウェアはストック(純正)のままという点が特徴です。
JaguarがJazzmasterと決定的に異なるのはスケール長(24インチ)。
Jazzmasterより1.5インチ短いスケールです。
同じ弦テンションでも出音のアタック感が変わります。
Jazzmasterは「ゆっくり溶けていく音」です。
対してJaguarは「歯切れよく立ち上がる音」を持ちます。
しかしブリッジの弦支点が短いのが違いです。
グライドギター奏法では弦テンションの管理が難しくなります。.011以上の太い弦でブリッジへのテンションを確保してください。
Jaguarでのグライドギター安定の絶対条件です。
短いスケールが倍音の素早い展開を生みます。
LovelessでJazzmasterはどこまでも広がる音塊を作ります。
Jaguarはその音塊に「輪郭の断片」を与えます。
- 音の特徴:24インチスケールによる歯切れのよいアタック
- 鳴り:ストック純正ハードウェアの素直な響き。Jazzmasterとのレイヤーで立体感が増す
- 代表曲:「Soon」「To Here Knows When」
※参考:Fender Jaguar(現行)はこちら
ジャガーを使うほかのギタリストは、こちらで紹介しています。
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同系統のギターを選ぶポイント
初心者・入門者向け:ケビン・シールズのトーンに近づくためのギター選びポイントをまとめます。
①フローティングトレモロ搭載のJazzmaster系がファーストチョイス
グライドギター奏法にはフローティングトレモロが必須です。
②弦は.011ゲージ以上——フローティングブリッジの安定と奏法の精度に直結します。
③ピックアップはシングルコイル
ハムバッカーでは中域の「溶け方」が異なります。
あの液体的な音には近づきにくいでしょう。
④チューニング安定はMastery不要
ブリッジを後方に傾ける「ブリッジチルト」だけで劇的に安定します。
どんなギターを使っていても試せます。
弦を.011ゲージに変えてブリッジのテンションを整えてください。
グライドギター奏法の精度とトーンは確実に変わります。
使用ギター年表
| 年代 | 使用ギター | トピック |
|---|---|---|
| 1988年以前 | Ibanez Jazzmasterコピー | シールズ最初のオフセットギター。スケールダウンP90搭載、トレモロなし |
| 1988年〜 | 1964 Fender Jazzmaster(借用) | グライドギター奏法を発見・確立した運命の一本 |
| 1989年〜現在 | 1959 Fender Jazzmaster(1964年再塗装) | LA購入の個人所有機。Loveless全編の中心的存在 |
| 1991年(Loveless) | Fender Jaguar各種 | カスタムペイント・ストックハードウェアでサブ機として多用 |
| 近年 | J. Mascis Signature Jazzmaster | 補強されたトレモロアームと現代的なセットアップでのライブ活動 |
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FAQ|ケビン・シールズ 使用ギターによくある質問
Q1. ケビン・シールズのメインギターは何ですか?
Fender Jazzmasterです。
1988年にBill Careyから借りた1964年製を起点に、現在は12〜25本を所有。
Fender公式インタビューでも「Jazzmasterは私の音楽の核心にある楽器」と語っています。
Q2. JazzmasterとJaguarの違いは?
最大の違いはスケール長です。
Jazzmaster(25.5インチ)はグライドギター奏法の中核で液体的な音。
Jaguar(24インチ)はよりシャープなアタック。
Lovelessでは両者をレイヤーして立体的な音の壁を作っています。
Q3. 使用弦のゲージは?
Guitar World誌のインタビューでの本人の発言です。
「.011〜.046ゲージがJazzmasterに合う」
ブランドは未公開。
Q4. Jazzmasterのチューニングを安定させる方法は?
ブリッジをピボット上で後方に傾ける「ブリッジチルト」が有効です。
Mastery bridgeなどのサードパーティ製品は使っていません。
(Guitar World インタビューより)
Q5. グライドギター奏法とは?
トレモロアームを手のひらか手首の下に握ったまま弦をストロークし続ける奏法です。
アームは「下方向のみ・ゆるく・高め」に設定します。
Q6. シグネチャーモデルは今でも買えますか?
Fenderから「Shields Blender」ペダルが2023年に発売されています。
ギター本体のシグネチャーモデルは現時点では市販されていません。
代替候補はFender Player Jazzmasterです。
Q7. サウンド再現に必要なアンプとエフェクターは?
アンプはVox AC30またはMarshall系。
エフェクターはYamaha SPX90の逆再生リバーブが核心です。
Digitech Whammyも確認されています。
Roger Mayer Octavia・Axis Fuzzも同様です。
シューゲイザーサウンドとエフェクターについてはこちらの記事も参考になります。
Q8. 「I Only Said」の特殊チューニングとは?
6弦からE-A-B-G-G-Eというチューニングです。
4弦をB、2弦をGに下げます。
開放弦のドローン効果でマイクロトーナルなうねりが生まれます。
ワウワウ効果はペダルではなくスタジオでEQノブをリアルタイム操作して生み出されています。
Jazzmasterを使うほかのギタリストや、今買えるモデルは、こちらで紹介しています。
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まとめ|JazzmasterとJaguarが描くケビン・シールズの音楽
まとめ
- Fender Jazzmasterはグライドギター奏法の核心。フローティングトレモロと温かいビンテージPUが「液体の音」を生む
- Fender JaguarはLovelessのサブ機。24インチスケールによる引き締まったアタックでJazzmasterに立体感を加える
- チューニング安定はMastery不要。純正ブリッジを後方に傾けるだけで1時間安定する
- 弦は.011〜.046ゲージ——グライドギター奏法の精度とブリッジ安定の両方に直結する最重要チョイス
コードが空気に溶けるあの音の秘密は機材の希少さではありません。
弾き手がギターの「揺らぎ」と向き合い続ける誠実さにあります。
弦のゲージとブリッジセットアップを変えるだけです。
トーンの安定感と質感は確実に変わります。
まずここから試してみる
・エレキ弦 .011〜.046ゲージ ¥1,000〜1,500前後
▶ .011〜.046ゲージの弦をサウンドハウスで探す
参考文献・出典
- Rolling Stone:「My Bloody Valentine's Kevin Shields: The Guitar That Changed My Life」
- Fender公式:「My Bloody Valentine's Kevin Shields on the Jazzmaster and His Iconic Albums」
- Stringjoy:「The Guitars of Kevin Shields」
- Tape Op Magazine:「My Bloody Valentine: Kevin Shields' Recording Secrets」(No.26)
- Equipboard:「Kevin Shields」機材リスト
- Mixdown Magazine:「Gear Rundown: Kevin Shields of My Bloody Valentine」
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