ジョン・メイヤーのギター年表と象徴的モデル5選
現代の3大ギタリストの一人と称されるジョン・メイヤー(John Mayer)。彼のサウンドの変遷は、使用するギターの歴史そのものでもあります。デビュー当時のストラトキャスターから最新のPRSまで、彼のキャリアを彩った名機たちを詳細な年表と解説で紐解きます。
ジョン・メイヤー使用ギター年表
| 年代 | 主な使用ギターとトピック |
|---|---|
| 1990年代後半 | 高校卒業後、ガソリンスタンドで働き貯めた資金でFender Stevie Ray Vaughan Stratocaster(SRVモデル)を購入。スティーヴィー・レイ・ヴォーンに心酔し、このギターで腕を磨く。 |
| 2001年 | メジャーデビューアルバム『Room for Squares』発表。主要トーンはフェンダー製ストラトキャスター(SRVシグネチャーモデル)とフェンダーアンプ(Vibro Kingなど)の組み合わせ。代表曲「No Such Thing」「Why Georgia」等でクリーンなストラトサウンドを披露。 |
| 2004年 | フェンダー・カスタムショップのマスタービルダー、ジョン・クルーズ製作による「ブラック・ワン」(Black One)を入手。以降ジョン・メイヤー・トリオ~アルバム『Continuum』期にかけてメインギターとして使用(「Gravity」など)。 |
| 2006年 | フェンダーから初のジョン・メイヤー・シグネチャー・ストラトキャスター発売(サンバーストにべっ甲ピックガード、Big Dipper PUなどが特徴)。ライブでも市販モデルを使用し始める。 |
| 2007年 | ライブ『Where the Light Is』にて、ヘンドリックスへのトリビュートとしてMonterey Pop Stratocasterレプリカを使用(「Bold As Love」)。指板や塗装に独自の改造を施していた。 |
| 2010年前後 | フェンダー・カスタムショップからブラック・ワン量産型(限定83本のTributeモデル)や、量産ラインのBLACK1スペシャルエディション(500本限定)が発売。 |
| 2012年 | アルバム『Born and Raised』制作・ツアーでMartinのアコースティックギターを多用。シグネチャーモデルOMJMやヴィンテージD-45に加え、フェンダー・テレキャスターも使用。 |
| 2015年 | フェンダーとのエンドース契約を終了。自身のヴィンテージ1964年製ストラトキャスターをメインに据え、この個体が後の新シグネチャー開発の基準となる。 |
| 2015~2016年 | Dead & Companyに参加開始。ジェリー・ガルシアの機材を意識し、PRS社と共同開発した「Super Eagle」を使用。 |
| 2018年 | PRS Silver Sky発表。ポール・リード・スミスとの2年に及ぶ共同開発により誕生した最新シグネチャーモデル。以降、現在までメインのエレキギターとなる。 |
| 2022年~現在 | 既存のイメージに囚われない機材選びを展開。ESP製 SnapperやCharvel Custom San Dimas(スケートボード柄)、さらには変則的な仕様のDead Spec Silver Skyなどを試し、モダンな仕様やハードロック的なサウンドへもアプローチを広げている。 |
キャリアを象徴する5本のギター詳細
1. Fender Stevie Ray Vaughan Stratocaster(初期の愛用ストラト)
ジョン・メイヤーの原点ともいえるギターです。高校卒業後に購入し、バークリー音楽院時代からデビュー初期まで苦楽を共にした一本。太いネックとテキサス・スペシャル・ピックアップによる、粘りのある極上のブルース・トーンが特徴です。「Neon」や「No Such Thing」など初期の名演は、このギター(および同時期のストラト)によって生み出されました。
2. Fender Custom Shop “Black One” Stratocaster(ザ・ブラックワン)
2004年製、ジョン・メイヤーの代名詞的ギター。激しいレリック加工とゴールドパーツが特徴のオールブラック・ストラトです。『Continuum』収録の「Gravity」や「Slow Dancing in a Burning Room」で聴ける、太く甘い、かつ抜けの良いトーンはこのギターならでは。世界中のファンが最も憧れるモデルの一つです。
3. Martin OM-28JM / OMJM(シグネチャー・アコースティック)
小ぶりなオーケストラ・モデル(OM)ボディに、ドレッドノートと同じロングスケール(25.4インチ)ネックを組み合わせた独特の仕様。これにより、抱えやすさと張りのある力強いサウンドを両立しています。指弾きでの繊細なニュアンスとストロークの迫力を兼ね備え、ジョンのアコースティックプレイの核を担います。
4. PRS Private Stock Super Eagle(Dead & Co期の特別モデル)
グレイトフル・デッドの音楽を演奏するためにPRSと開発された最高級モデル。ロングスケール(25.375インチ)、HSH配列のピックアップ、内蔵プリアンプなど、あらゆる要素が特別仕様。「非常にハイファイで、クリアなトーン」を持ち、複雑なジャムセッションでも音が埋もれない設計になっています。
5. PRS Silver Sky(現行メインエレクトリック)
2018年発表。フェンダーを離れたジョンが、「ヴィンテージ・ストラトの理想形」をPRSの技術で再構築したモデル。1963-64年製のストラトを徹底的に研究し、ヘッド形状からネックグリップ、ピックアップのボイシングに至るまでジョンのこだわりが詰まっています。現在は廉価版の「SE Silver Sky」も登場し、新たなスタンダードとなっています。
その他のジョン・メイヤー使用ギター
メイン以外にも、楽曲やプロジェクトに応じて多彩なギターを使用しています。
- Gibson ES-335 / L-5:ジャズやスローブルースで使用。
- Gibson SG Standard:トリオ編成などで攻撃的なサウンドが必要な際に登場。
- Fender Telecaster:『Born and Raised』以降のカントリーテイストな楽曲で使用。
- Novax Expression:『Room for Squares』ジャケ写で有名な、扇状フレット(ファンドフレット)を持つ多弦ギター。
- Charvel / Jackson / ESP:近年、80年代風のソロやモダンなテクニックを試す際に使用されるハイゲイン/テクニカル系ギター。
入手困難なモデルと代替ギターの比較
ジョン本人の使用モデルは高額や限定品が多いため、現実的に入手可能な選択肢をまとめました。
| 高額・希少なオリジナル | 現行モデル(推奨) | 廉価な代替候補 |
|---|---|---|
| Fender Custom Shop “Black One” 生産終了・プレミア価格 |
PRS Silver Sky 現在のジョンのメイン機。サウンドの方向性は継承。 |
PRS SE Silver Sky 非常に評価の高い廉価版。コスパ最強の選択肢。 |
| Martin OM-28JM (限定404本) 入手極めて困難 |
Martin OMJM (現行) 仕様を簡略化した量産シグネチャー。音質は本格派。 |
Martin 000-X1AE 等 Martinの低価格帯モデル。またはEastman等のコピーモデル。 |
| PRS Super Eagle 価格100万円以上 |
PRS Special Semi-Hollow Super Eagleのコンセプトを受け継ぐHSH・セミホロウ機。 |
PRS SE Hollowbody II 手頃な価格のセミホロウ。ピックアップ交換等で近づける。 |
筆者体験談:ESPモデルを弾いてみた感想
ジョンが2022年頃にSNSで紹介し話題となったESP製のストラトタイプ(Snapper)。筆者も同系統のモデルを試奏する機会がありましたが、その完成度に驚かされました。
ヴィンテージ・フェンダーに慣れ親しんだ手には、ESPのネックは薄く、非常にスムーズでモダンに感じられます。音の立ち上がりが速く、エフェクトの乗りも良いため、ジョンが「新しいトリックを試したくなる」と語ったのも納得です。伝統的なブルーススタイルの枠を超え、常に進化を求める彼の姿勢が、こうしたモダンな機材選びにも表れていると実感しました。

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