ジミヘン使用ギター徹底解説|ウッドストックのストラトからフライングVまで【年表付き】
ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)は、ロック史における最重要ギタリストのひとり。1960年代の音楽シーンに革命を起こし、今なお多くのギタリストに影響を与え続けています。
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モンタレー・ポップで燃やしたストラトキャスター、ウッドストックで響かせたオリンピックホワイトのストラト、そして後期のサイケデリックなフライングV…。その一つひとつが音楽史に刻まれています。
ジミ・ヘンドリックス使用ギター年表
ジミヘンがキャリアを通じて使用したギターを、年代ごとに整理しました。実際のライブ・レコーディングでの使用例が確認されているものを中心に掲載しています。
年代 | 使用ギター | 代表的な使用例 |
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1962–1965 (初期キャリア) |
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R&Bセッション時代のライブ/バックバンドでの活動 |
1966–1967 (ブレイク期) |
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「Are You Experienced」録音、Monterey Pop Festival (1967) |
1968–1969 (黄金期) |
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「Electric Ladyland」期のツアー |
1969 (ウッドストック) |
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Woodstock Festival (1969) 「Star Spangled Banner」 |
1970 (晩年) |
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Isle of Wight Festival (1970)、Cry of Love Tour |
ジミヘン使用ギターに関する注意点
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ジミ・ヘンドリックスは、ギターを頻繁に買い替えたり、ステージで壊したりしたため、同じ年に複数本のストラトキャスターを使っていました。そのため「この年=この1本」と断定するのは難しく、ライブや録音ごとに違う個体を使用しているケースも多いです。
また、ジミヘンは特定の1本にこだわるというより「ストラトキャスター+マーシャルアンプ」という組み合わせで常に独自のサウンドを生み出していました。つまり、個々のギターよりも「プレイスタイルとアンプの使い方」が彼の音を決定づけていたとも言えます。
さらに、初期の使用ギター(SuproやDanelectroなど)については、情報が断片的で「諸説あり」とされる部分も少なくありません。この記事では、Guitar World・Premier Guitar・The Chief’s Guitars・GroundGuitarなど信頼できる一次ソースを参照しつつ、確認できる範囲でまとめています。
1962–1965|初期キャリアの使用ギター
プロとして活動を始めた初期のジミ・ヘンドリックスは、R&Bバンドやセッションギタリストとして各地を転々としながら演奏していました。この時期の使用ギターは記録が断片的で、正確なモデル特定には諸説あるのが特徴です。ただし複数の信頼できる資料から、以下のモデルが確認されています。
Supro Ozark 1560S(諸説あり)
ジミヘンが最初に所有したと言われるのが、Supro Ozark 1560S。ただし、このギターは盗難に遭ったという証言もあり、使用時期やライブでの確認写真は限られています。
出典:GroundGuitar「Jimi Hendrix Gear Database」
Danelectro Shorthorn(シルバー/諸説あり)
セッション時代に使用していたとされるのが、Danelectro Shorthorn。独特の軽量ボディとリップスティック・ピックアップが特徴で、当時の安価なギターとして知られています。ジミヘンが実際に所有していた個体は、母親に「Betty Jean」と名付けていたという証言も残っています。
出典:Guitar World「Hendrix’s Early Years Gear」
Epiphone Wilshire
1964年頃、ジミヘンはEpiphone Wilshireを手にしていたことが写真で確認されています。このギターはハムバッカー搭載で、当時のR&Bバンドでのバック演奏に使用されたとされています。
出典:The Chief’s Guitars「Jimi Hendrix Epiphone Wilshire」
Fender Jazzmaster(ホワイト)
ニューヨーク移住後のクラブ活動時代には、ホワイトのFender Jazzmasterを使用していた記録があります。セッションマン時代の貴重な映像や写真にも映っており、ストラトキャスター以前に使用していたフェンダー製品の一つです。
出典:Premier Guitar「Hendrix Gear Through the Years」
この時期のジミヘンはまだ「ストラト=トレードマーク」になる前で、入手可能なギターを使いながら独自のプレイスタイルを模索していた段階でした。
1966–1967|ブレイク期とモンタレー・ポップの伝説
1966年、ジミ・ヘンドリックスはロンドンでThe Jimi Hendrix Experienceを結成し、翌年にはデビューアルバム『Are You Experienced』をリリース。ここから彼の代名詞となるFender Stratocasterがメインギターとして定着しました。
Fender Stratocaster(黒・白)
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ジミヘンはこの時期から左利き用ではなく右利き用のストラトキャスターを逆さに弦を張り替えて使用するスタイルを確立。黒のストラトや白のストラトが複数本確認されており、テレビ出演やスタジオ録音でも使われました。特に「Hey Joe」「Purple Haze」など初期代表曲のレコーディングで活躍しました。
出典:Guitar World「Jimi Hendrix: The Guitars of Are You Experienced」
1965 Fender Stratocaster Sunburst|モンタレーで燃やしたギター
1967年6月、Monterey Pop Festivalでジミヘンは伝説的なパフォーマンスを披露。フィナーレで1965年製サンバーストのFender Stratocasterに火をつけ、観客を熱狂させました。この「燃やされたストラト」は、ロック史上最も象徴的なギターのひとつとされています。
出典:Premier Guitar「Hendrix at Monterey: The Sacrificial Strat」
音作りの特徴|ストラト+マーシャルの確立
この時期に確立されたのが、Fender StratocasterとMarshallアンプの組み合わせ。歪みとクリーンを自在に操り、爆発的なフィードバックと繊細なトーンを行き来するスタイルは、以後のロックギターの定番となりました。
1966–67年は、ジミヘンが「ストラト=自分の声」と定義づけた時期であり、モンタレーでの燃焼パフォーマンスはその象徴的瞬間でした。
1968–1969|黄金期と多彩なギターの導入
1968年、ジミ・ヘンドリックスはアルバム『Electric Ladyland』をリリースし、ギタリストとしての頂点に立ちました。この時期は従来のストラトキャスターに加えて、Gibsonの個性的なモデルも導入し、さらに幅広い音色を追求しています。
Fender Stratocaster(サンバースト/オリンピックホワイト)
引き続きメインギターはストラトキャスター。サンバーストやオリンピックホワイトの個体を複数所有し、レコーディングからライブまで常に使用していました。代表曲「Voodoo Child (Slight Return)」のレコーディングでもストラトのサウンドが確認できます。
出典:Guitar World「Hendrix’s Electric Ladyland Sessions」
Gibson Flying V(1967 カスタムペイント)
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1967年に入手し、1969年のライブでも頻繁に登場したのがGibson Flying V。このモデルはジミヘン自身がサイケデリックなカスタムペイントを施しており、ステージ映像でも印象的です。特に「Red House」などブルース色の強い楽曲で使用されました。
出典:The Chief’s Guitars「Hendrix’s 1967 Flying V」
Gibson Les Paul Custom(白・SGタイプ)
1969年頃には白のGibson Les Paul Custom(SGボディシェイプのダブルカッタウェイ)を使用していました。トリプルピックアップ搭載の個体で、独特の中音域とサステインを持ち、ストラトとは異なるサウンドを聴かせています。
出典:Premier Guitar「Hendrix’s Gibson Guitars」
音作りの広がり
この時期のジミヘンは「ストラト+マーシャル」をベースにしつつ、曲調やライブの場面によってギブソン系のギターを持ち替えるようになりました。結果として、ブルースからサイケデリックロックまで自在に行き来する幅広い音色が実現されています。
1968–69年は、ジミヘンがギターのバリエーションを積極的に取り入れ、音楽的レンジを拡大した時期といえるでしょう。
1969|ウッドストックとオリンピックホワイトのストラト
1969年8月、ニューヨーク州で開催されたWoodstock Festivalは、ジミ・ヘンドリックスのキャリアにおける最も象徴的な瞬間のひとつです。ヘッドライナーとして登場したジミヘンは、約2時間にわたるステージの最後に「The Star-Spangled Banner(星条旗)」を演奏し、そのパフォーマンスは音楽史に残る伝説となりました。
1968 Fender Stratocaster Olympic White
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この伝説的ステージで使用されたのが、1968年製のFender Stratocaster Olympic White。右利き用を左に持ち替え、逆さに弦を張り替えたジミヘン独特のスタイルで演奏されました。
この個体は、メイプル指板・ラージヘッド仕様で、ウッドストックの象徴的なビジュアルとして世界中に広まりました。
出典:The Chief’s Guitars「Jimi Hendrix’s Woodstock Stratocaster」
「星条旗」演奏とサウンド
「Star-Spangled Banner」では、ストラトとマーシャルアンプを駆使し、爆撃音や悲鳴を模したフィードバックを表現。ベトナム戦争下のアメリカ社会を象徴する演奏として、今日でも語り継がれています。
ウッドストック・ストラトの行方
このギターは後にジミヘンのマネージャー、ミッチ・ミッチェルを経て保管され、現在はExperience Music Project(シアトルの博物館)に展示されています。市場に出回ることはなく、ファンが購入できるものではありません。
出典:Guitar World「Where is Hendrix’s Woodstock Strat Now?」
ウッドストックのストラトは、ジミヘン=ストラトキャスターというイメージを決定づけ、ロックの象徴として永遠に語り継がれる存在となりました。
私もシアトルに行った際に、訪れて現物を見ましたが本当に感動しました。
1970|晩年のギターとIsle of Wight
1970年、ジミ・ヘンドリックスは「Cry of Love Tour」に参加し、ヨーロッパ各地やアメリカで精力的にライブ活動を行いました。この年8月のIsle of Wight Festivalが事実上最後の大規模公演となり、同年9月に27歳で急逝することになります。
Fender Stratocaster(黒・白・複数所有)
最期まで愛用したのはやはりFender Stratocaster。晩年も黒や白のストラトを複数所有しており、ステージやスタジオで頻繁に持ち替えていました。特に「Machine Gun」など長尺の即興演奏では、彼のストラトが真価を発揮しました。
出典:Premier Guitar「Hendrix’s Final Tour Gear」
Gibson Flying V(再登場)
1967年に手に入れたカスタムペイントのFlying Vを、1970年のライブでも使用。ブルース色の強い楽曲や即興でのソロにおいて、ストラトとは異なるサウンドを聴かせています。
出典:The Chief’s Guitars「Hendrix’s Flying V Return」
Gibson SG Custom(白・トリプルピックアップ)
Isle of Wight Festival(1970年8月)では、白のGibson SG Custom(トリプルピックアップ仕様)を使用。力強いクランチサウンドと長いサステインが特徴で、晩年のジミヘンの多彩な音作りを支えました。
出典:Guitar World「Hendrix’s SG Custom at Isle of Wight」
サウンドの深化
晩年のジミヘンは、ストラトに加えてギブソン系のギターを使い分けることで、さらに広がりのあるサウンドを展開しました。ファズやワウと組み合わせ、ブルースからサイケデリック、ハードロックまで自在に表現していたのです。
1970年のジミヘンは、ギターとアンプ、エフェクトを駆使して常に新しい表現を探求していた最中でした。彼の突然の死は音楽史に大きな衝撃を与えましたが、そのサウンドは今なお生き続けています。
入手困難モデルと代替候補
ジミ・ヘンドリックスが実際に使用したギターは、その多くが博物館に収蔵されており、一般の市場に出回ることはありません。特にウッドストックのオリンピックホワイトのストラトや、モンタレーで燃やされたストラトは「歴史的遺産」とされ、購入は不可能です。
シグネチャーモデル
- Fender Jimi Hendrix Stratocaster
右利き用ストラトを逆さに持った際の雰囲気を再現したモデル。リバースヘッド仕様で、ジミヘンらしいテンション感のあるサウンドを再現できます。
参考リンク:サウンドハウス公式ページ - Gibson Custom Shop Flying V Jimi Hendrix
1967年にジミヘンが使用したサイケデリック塗装のフライングVを再現した限定モデル。コレクターズアイテムとしても人気。
参考リンク:Gibson公式サイト
現行の代替モデル
- Fender Player Stratocaster
ジミヘンのストラトに最も近い現行ラインナップ。比較的手に入れやすい価格帯で、王道のストラトサウンドを再現できます。 - Epiphone SG Custom
Isle of Wightで使用された白いSG Customの代替としておすすめ。コストパフォーマンスに優れ、ジミヘン晩年の雰囲気を味わえます。
中古市場
オリジナルに近いヴィンテージモデルは数百万円単位で取引されることがあり、信頼できる中古市場や専門店での購入が前提となります。特にFenderの60年代ストラトやGibsonのフライングVは、プレミア価格が常態化しています。
入手困難なモデルを狙うよりも、現行のシグネチャーや代替モデルを選び、ジミヘンの音作りを体感するのが現実的といえるでしょう。
筆者の体験談|ストラト+マーシャルの魔力
ジミヘンの記事を書くにあたり、実際にFender StratocasterとMarshallアンプを組み合わせて音を出してみました。結論から言えば、この組み合わせはまさに「ロックの声」と呼ぶにふさわしいものでした。
ストラトのシングルコイルが持つシャープな立ち上がりと、マーシャル特有の中域の押し出しが重なると、クリーンからドライブまで自在に表現できるのです。軽くピッキングすれば繊細で透明感のある音が鳴り、力強くかき鳴らせば荒々しいフィードバックに変わる。このダイナミクスの幅こそ、ジミヘンが自在に音楽を操れた理由だと体感しました。
特に「Little Wing」を意識してアルペジオを弾いたとき、ストラトならではのベルのような高音とマーシャルの温かみが重なり、まるで空間そのものが揺らぐような感覚を覚えました。逆にワウを踏み込んで「Voodoo Child」を試すと、まさにジミヘンのエネルギーを追体験できるようで鳥肌が立ちました。
実際に触ってみて改めて思うのは、ジミヘンが「特定の1本」ではなく、ストラト+マーシャルという組み合わせそのものを自分の声としたということです。ギターを壊しても買い替えられたのは、この組み合わせなら常に自分の音を出せる確信があったからでしょう。
まとめ|ジミヘンとギターの関係性
ジミ・ヘンドリックスは、キャリアを通じて数多くのギターを使用しましたが、常に中心にあったのはFender StratocasterとMarshallアンプの組み合わせでした。モンタレーで燃やされたストラト、ウッドストックで鳴り響いたオリンピックホワイトのストラト、そしてFlying VやSG Custom…。いずれもロック史を彩る伝説の楽器です。
しかし、ジミヘンの本質は「特定の1本」ではなく、音を生み出す姿勢と自由な発想にありました。だからこそ、現行のシグネチャーモデルや代替モデルを手にしても、その精神を感じながら自分なりのサウンドを探求することができるのです。
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ジミヘンの音に憧れるなら、まずはストラト+マーシャルを手に取り、自分だけの表現を探ってみてください。
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